戦場Gの聖母
明転。G線上のアリアが流れる。この曲は指示があるまでリピートで再生。

山奥の小屋。中央に大きなテーブル。上下問わず本やCD、DVDなど、様々なものが乱雑に積み重ねられており、その中心にはラジカセが据えられている。その周りのデスクにも、同じようにCDなどが散乱している。

兵士、銃を構えて小屋の中に入り込む。歳は二十代後半。軍服を着ており、キビキビとした動作。しかし、腕を負傷している様子。やがて小屋内に敵兵がいないことを確認する

兵「政府の犬が。もう少しズレていたら致命傷だ(と言いつつ、応急処置を済ませる)。しかし、ここは……(上を見上げて音楽に気を示す態)」

兵士、辺りを見回すが、見覚えのない代物ばかりなので小首をかしげる。

兵「……こんなところに一軒家。それも見たことのない造りだ。エリアGというやつか…?(指で机をなぞり)まさか、政府軍のアジト!」
兵士、再び銃を構える

兵「人影はない……罠?(耳をそばだて)この音は……信号か……?」


奥から主人が出てくる。五十代前半。少し背筋は曲がり気味で、忙しなく入ってくる

兵「誰だ!」

主「おや、お客様ですか」

主「あなた、鳩軍の方でしょう。道理で今日は上空を色んなものが飛び回っている」

兵「政府の人間か」

主「安心してください。敵じゃありませんよ」

兵「それはこちらが決めることだ」

兵士、おもむろにレーザーポインターを取り出し、主人に当てる。

兵「……無反応?」

主「なんですか、それ」

兵「……味方なら青く、敵なら赤く光る」

主「何も点かないみたいですが」

兵「だから、味方とは言えない」

主「でも敵でもない」

兵「……」

主「ああ、そうか。ええと、確かこの辺りに(カードを本の間から取り出す)」

主人、あちこち探し回るが机が散らかっているため、なかなか見つからない

兵「お、おい、動くな!」

主「まあまあ、え〜っと……これは違う……」

主人がカードを見つける

主「ああ、あった」

兵「カード?何年前のものなんだ。」

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