なんだと？
『なんだと？』
表面上は普通の日常のやり取りをしているが、彼らは心の中で何やら葛藤をしているようだ。
男１、２が道ですれ違う。
男１、お札を落とす。
男２ あの、落としましたよ・・・
男２、お札を見て気付く。一瞬時間が止まる。
男2 （なん・・・だと？）
男２、お札を広げて見せる。
男２ （二千円札、だと？ 今どき二千円札を持っている、だと？
あの使いづらい紙幣を所持している、だと？）
男１と視線が合う。
男１ （なん・・・だと・・・？
あいつも二千円札を持っている、だと？）
一瞬時間が止まる。
男１ （今どき二千円札なんて使いづらいお札を携帯している、だと？
まさかあいつも俺と同じく、二千円札をコレクションしているとでもいうのか？）
男２ あの、
男１ （なんだと？ 話しかけてきた、だと？ 一体なんの用があるっていうんだ。）
男２ 落としましたよ。
男２、二千円札を差し出す。
男１ （なん・・・だと？ 俺の二千円札、だと？）
硬直する男１。
男２ （なんだと？ 受け取らない、だと？）
男１ （こいつ、いつの間に俺の二千円札を手に入れたんだ？）
男２ （まさか、俺が盗んだと、疑われているのか？）
男１ （なんという速さだ。神業だ。まさに神速。）
男２、荷物を落とす。
荷物からリンゴが転がる。
男１、荷物を拾おうとする。
男２、転がったリンゴを追いかける。
拾う。視線を上げると目の前には誰もいない。
男１ （消えた・・・だと？）
男２、男１に背後から声をかける。
男２ どうされました？
男１ （後ろ、だと？）
男１、ゆっくりと後ろを向く。
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