道化師の朝の詩
【登場人物】
宇佐見 莉子(うさみ りこ)
片倉 陽香(かたくら ようか)
須々木 伊織(すずき いおり)
皆川 晶(みながわ あきら)
行平 みつる(ゆきひら みつる)
渡井 千夏(わたらい ちなつ)
郵便お預りセンター局員(ユウカリ)
【1】
冬の夜。
須々木家。伊織の部屋。
伊織が何となく部屋を片付けている。
ピンポーン。
伊織、部屋を出る。
しばらくして、片倉陽香を連れて戻ってくる。
陽香 あれ、もしかして一番乗り?
伊織 イエス。
陽香 やっぱり揃わないのね。
伊織 そう、いっつも遅刻。陽香以外は。
陽香 もう慣れちゃったけど。あ、はい、これ。(袋を渡す)
伊織 何?
陽香 大したもんじゃないけど。
伊織 (中を覗いて)あ、シュークリーム。
陽香 お世話になります。
伊織 いいのに。今日うち、誰もいないし。
陽香 そういうわけにはいかないでしょ。一応。
伊織 お母さんによろしく言って?
陽香 うちも同じこと言ってた。
伊織 同じこと?
陽香 「伊織ママによろしく☆ 今度ランチしようね!」って。
伊織 伝えとくよ。
陽香 でも良かったの?
伊織 何が?
陽香 お家の人留守なのに泊めてもらっちゃって。
伊織 あぁ、いいのいいの。オカン、普通にOKだったし。
陽香 ていうか、あんたは行かなくて良かったわけ?
伊織 えー、だって、ほとんど会ったこともないようなばあちゃんだし。
陽香 でも倒れたんでしょ?
伊織 違う、コケたの。
陽香 それにしたって。
伊織 しかもさっき電話あって、全然大したことなかったから
温泉でもエンジョイしてくわーって。
陽香 あぁ、そう・・・。
伊織 どうせそんなことだろうと思ってたよ。
ひったくりをマッハで追っかけるばあちゃんだよ?
陽香 そうなんだ。
伊織 気の毒だよなぁ。あんだけタコ殴りにされて警察送りって、
二回刑務所行くようなもんじゃん。
陽香 うん。
伊織 ま、あたしらもさ、親とかいないほうが盛り上がれるし、ちょうどいいって。
陽香 そりゃあまぁ・・・うちらきっとうるさいから。
伊織 でしょー? まぁあっちに妹はいるんだけどさ、全然気にしなくていいから。
1/27
面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種
Windows
Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。