こどもたちの情景
「こどもたちの情景」


登場人物
・セセ(川野瀬世)心臓病を患う少女
・ラギ(川野月)バニシングツイン
・ナツ(原田夏)交通事故で脳死状態の少女
・ミキ(立花美樹)瀬世の主治医












   暗転中。
   交通事故の衝撃音。
   救急車のサイレンの音。

   照明イン(生と死の狭間の世界)
   ナツが倒れている。
   ゆっくりと起き上がるナツ。周囲を落ち着きなく見回したり、所在なさげに自分を抱きしめたりして、不安そうに歩き回っている。
   かすかな光が差してくる。
   ナツ、不安そうな表情のまま、光の方へと歩いていく。
   暗転。


   明かりがつく。
   病室。
   ベッドに横になって本を読んでいるセセ。
   ミキが入ってくる。

ミキ「セセちゃん、調子はどう?」
セセ「良かったらこんなところいない」
ミキ「まあ……それはそうなんだけど」
セセ「ねえ先生。私いつ退院できるの?」
ミキ「今回はちょっとかかるかも。いろいろ検査もしたいし」
セセ「無駄なことしなくていいのに」
ミキ「無駄なこと?」
セセ「どうせ治らないんでしょ。私の心臓」
ミキ「今の医学ではね。でも医学は日々進歩しているから」
セセ「そうかなあ」
ミキ「そうだよ」
セセ「ウイルスに感染したらウイルスを殺す、ガンになったらガンを切りとる、炎症が起こったら炎症を鎮める、結局起こったことに対処するだけの対症療法だよね。根本的な解決にはなってないっていうか。医学って本当に進歩してるの?」
ミキ「してるよ。例えばウイルスを昔よりずっと細かく分析できるようになったし、やっつけ方だってたくさんできた」
セセ「なんかそれってテレビのチャンネルが増えましたって話みたい。だけど結局テレビ自体はたいして進歩してない」
ミキ「うーん……セセちゃんは賢いねえ」
セセ「口が達者なだけだよ」
ミキ「賢くなきゃ口が達者にはなれないよ」
セセ「それって嫌味?」
ミキ「そう聞こえた?」
セセ「ううん。私がひねくれているだけ。自分でも思うもん。ひねくれていて可愛くない子だなって」
ミキ「そんなことないよ」
セセ「気休めありがと」
ミキ「……」
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