チャリティマラソン
チャリティマラソン

【登場人物】
川本 40代 外見からはわからないが高次脳機能障害持ち 
石田 30代 左の片麻痺と高次脳機能障害持ち


マイクスタンドと寄席のめくり台があり、高次YESと書かれている。
出囃子がかかる中、川本、石田が登場する。
石田は左の片麻痺で装具を着けており、左手はだらんと垂れ下がっている。川本に麻痺はない。

二人 はいどうもー
石田 石田です
川本 川本です
二人 高次YESです。よろしくお願いします
石田 私は分かりやすいですけど、私達障害者同士なんです
川本 ふたりとも高次脳機能障害っていう障害を持ってて、(石田を指して)劇作家です
石田 売れてませんし
川本 そうですか?
石田 脳出血で倒れてから仕事ゼロです。左脳は言語、右脳は抽象って言われてますけど
川本 ってことは左が?
石田 (頷いて)もう気が散って仕方ないです
川本 でも分かりやすいですよ、石田さんの記事
石田 恐縮です。あ、記事っていうのは、毎月出してる高次脳機能障害を支援する冊子でして
川本 脳にまさかがあったとき!
石田 それに記事を連載させて頂いてまして
川本 素晴らしい(と、拍手)
石田 でもこれだけですし。手持ちのカード使い切ってる感覚に近くて
川本 でも鋭いですよ。何だかなぁと思ってたのに、石田さんの記事でスッと雲が晴れていくというか
石田 何にも出ませんよ
川本 所詮凡人なので
石田 いやいや。川本さんのことも書かせて頂きました
川本 あぁ……それ読めてないんです
石田 悪く書いてないですよ
川本 知ってます。知ってますけど、自分のことは…、生き恥を晒すようで……
石田 自分もそうでしたけど、倒れる前は普通ぶってる自分がいたんですよね
川本 そう!
石田 つらいですよね、見えない障害って
川本 ホントですよ。昼も夜もなく走り回ってたあの頃に……
石田 そうだ、走り回ってたで思いだしたんですけど、こないだあったじゃないですか、これ24時時間テレビ
川本 いやぁ、24時間テレビは(苦手)
石田 ですよね
川本 チャリティマラソンとか走る意味あるんでしょうか
石田 そのチャリティマラソンを障害当事者が走ったらどうかなと思ったんです
川本 私がですか?
石田 やりません? 実況アナウンサーやるんで
川本 ええ?
石田 さあ、いよいよです。
川本 (走りだす)
石田 心を一つにして、ぜひ皆さんで歌いましょう
川本 すいません、ちょっと耳が……
石田 失礼しました。声援の皆さんにお願いします。川本さんは音にとても敏感なので
川本 頑張れも禁止です
石田 どうか心の中で静かに見守ってください
川本 注文つけてうるさいなと思われるかもしれませんが
石田 川本さんは仕事に向かう最中、トラックに頭から追突、生死の境を彷徨い現在はコンビニに勤務しています。
川本 またおこしくださいませが言いづらいです
石田 お客がタバコを探していると、こんなことを言われたそうです
川本 (財布を何度も叩きつけて)まだすか? ……?
石田 あまりにたまりかねて
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