恋と窓と花瓶
恋と窓と花瓶

作:星水慕

登場人物
ナレ
女の子(台詞なし)

初恋

     明転。電車内。一人分の椅子があり、女の子が大人しく座り、窓の外を見てる
     外には様々な風景が見える

ナレ 女の子が一人、電車に揺られています。人は皆、生まれてからずっと電車に乗っています。人生を歩むとはそういうものでしょう

     電車が走っていく。電車は単線。対向は来ない。
     女の子が見ている先で、どんどん風景が流れていく

ナレ 女の子は窓を見ています。窓の外には綺麗な物と汚い物と興味のない物が流れていきます。その一つ一つはしっかりと目に映り、心に残り、消えていきます

     電車は変わらず走っていく。窓に映る風景に関わることもなく。

ナレ 女の子は成長していきます。より美しく、より麗しく。誰かに巡り合うために。

     がたんごとん。電車が走っていく

ナレ 女の子は成長していきます。親の手が届かないぐらいに、自分の足を信じ始めるのです

     電車が止まる。建物の中に入る

ナレ 電車が止まりました。ここは駅です。降りる事は出来ませんが、やはり重要な物として駅は存在します。人生とは、時たま挟まる分岐的な駅と大部分の日常的走行の積み重ねなのです

     窓の外には一輪のオレンジ色の花が飾られている
     それを見る女の子、ふいに、自分の胸に手を当てる

ナレ 気付きは唐突にもたらされます。得体のしれない心が女の子の胸に芽生えます

     女の子、席を立って、上手の方に歩いていき、はける
     そして花瓶を持って戻ってくる

ナレ 花瓶を手に取りました

     女の子、窓に近づき、開ける
 
ナレ 花に手を伸ばします

     止まる

ナレ 戸惑い、不安、心配、恐怖。そんな中で勇敢に手を伸ばします

     女の子、花にさわる

ナレ 花に触れました

     女の子、花を取り損ねてしまう
     駅と電車の間に花が落ちていく

ナレ 残念ながらその花は落ちていきます。二度と手が届かない所に行ってしまいました

     女の子、名残り惜しそうに花の落ちた先を見つめる
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