少女地獄
なんでもない
少女地獄

平井太郎(私さん)/怪人二十面相
明智小五郎
明智文代
小林芳雄
姫草ユリ子/新高妙子
殿宮あい子
立川
新高
花崎マユミ(声のみ)

第一章

〇姫草、観客に紛れ観客席に座る
○椅子が2脚上手花道に向かい合わせに置いてある。舞台中央にはテーブルと椅子二脚。平井、舞台真ん中に立つ。中央スポット
平井「それは1930年後半の九月初旬のある蒸し暑い晩のことであった。私は、D坂の大通りの中程にある、白梅軒という、行きつけのカフェで、冷しコーヒーを啜っていた。この白梅軒のあるD坂というのは、昔私の知り合いである男と出くわした奇妙とも言えるような殺人事件が起こった舞台である。しかし、私が注目して頂きたいのは殺人事件…ではなく共にその殺人事件に出会わした知り合いの男…明智小五郎のことである、その男は話をして見ると如何いかにも変り者で、それで頭がよさ相で、好青年とは言えないがいかにも天才的な顔……だったはずなのだが数年経つとあろう事か新聞で見ない日が少ないのではと言うほどの活躍をし、容姿端麗の非を見つける方が難しいような探偵となった。これはそんな彼と私が出会ったとんだ喜劇である」
○机の周りがが明るくなる。平井、椅子に座る。下手より明智小五郎登場
明智「やぁ、平井君。久しぶりだね」
平井「あぁ、最後にこうしてしっかりとあったのは君が文代さんと籍を入れる時くらいかな。しかし驚いたよ、君があんなに素敵な嫁さんを貰うだなんて、それに少年助手。小林くんだろう?よく出来た子じゃないか」
明智「はは、本当にね。文代も小林もよくやってくれているよ」
平井「…で?」
明智「え?」
平井「え?じゃないだろ、どうせ君のことだ。なにか事件やらなんやらで僕を呼んだんだろう?」
明智「ははは、バレてしまっていたか。うん、そうなんだよ、少し奇妙な事があってだね。君、姫草桜という少女を知っているかい?」
平井「あぁ、うちの近所に住んでいる子だよ。」
明智「うん、その子にどんな印象をうける?」
平井「…品行方正、徳高望重。模範生っていう感じの子だな。それにあのカナリア女高校の生徒だって聞いているな」
明智「あぁ、そのとうりだ。実はね、その子の身辺調査の依頼が入っているんだよ」
平井「…へぇ」
○明智、舞台中央へ移動。舞台全体明るくなる。

第二章

明智「どうぞ、座ってください」
○下手より立川登場
○立川が座ると、上手より文代。お茶を持ってくる
文代「どうぞ」
立川「あ、ありがとうございます」
明智「それで、本日はどのようなご依頼で?」
立川「その…私の姪に姫草ユリ子という少女がいるのです。その子の身辺調査をお願いしたいのです。此方がそのユリ子の写真です」
〇明智、写真をみながら
明智「自分の姪の身辺調査…ですか」
立川「いや、姪と言いましても私の両親は私が幼い頃に離婚しており、全くと言うほど関わりがなかったのです。姉が結婚しており苗字が『姫草』となり、そのまま子供を産んでいるという事実も知らなかったほどに。そんな姪である姫草がある日突然私の家に訪ねこういったのです『私、お母様に言われてここにきましたの。ここなら叔父さんがいるからって』と」
明智「いままで全くと言っていいほど関わりがなかったのに、ですか?」
立川「えぇ、そりゃまぁ吃驚しましたよ。このまま追い返すのも可哀想だろうと家に入れてやって話を聞くとどうやらこの辺りの大学…カナリア女高校に合格したは言いもののお金もなく、寮も借りることが出来ないというものだから、叔父である自分に頼ったのだと言っておりました」
明智「なるほど、お姉さんに確認はとったのですか?」
立川「……その事なのですが、彼女こうも言ったのです『私の母は私が高校に受かるとすぐ叔父さんの元へ行けと言って私を置いて自殺してしまいました。父も仕事の関係であの場を離れる訳にはいきません。叔父様、貴方しか頼れないのです』と涙ぐみながら言われてしまって、その時私はその言葉をすっかり信じ込んでしまいました。今思えばあの時しっかり確認しておけば良かったのです」
明智「え、というと貴方は確たる証拠もないのに信じきってしまったのですか」
立川「い、いえ。証拠と言えるものは確かに存在しました。手紙です。その姉からの手紙があるのです」
明智「手紙にはなんと?」
立川「姉が、見知らぬ車掌の男の事を綴ったものです。とはいえその車掌の名前は書かれておらずあの人、あの人と呼ばれていてよく分からないものでした。ただ何度も繰り返し書かれていたのは女車掌なんてしては行けない、貴方はあの人から離れなければならないと。残った遺産も全て寄付してしまいなさい、と」
明智「成程、そちらを拝見させていただいても?」
立川「はい、どうぞ」
明智「成程…しかし、お話を聞く限りあまり姫草さんを怪しむようなものはありませんでしたが」
立川「…姫草の父親を名乗る人物から手紙が届きます。姫草をよろしく。ありがとう、と。私は姫草に言うのです貴方の父親に会わせてくれと。しかし姫草の言うことには体調が悪い、仕事が忙しいと全く会わせてはくれません。それがもう5回です」
明智「5回、それは気になるものですね。会わせられない理由が別にあるのでしょうね。きっと」
○下手より小林、ひょっこりと顔をのぞかせ明智と立川の様子を伺っている
明智「小林君」
小林「はっはい!」
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