Pygmaliōn Panic!
Pygmaliōn Panic!
第一幕
魔法使い後ろ向きアクト付き
(照明スポット)
(雷の音SE)
魔法使い「いいかい少年、君には彫刻の才能を与えてやろう。だから君はその若き力で私の姿を彫りなさい。もしこの後十年までにそれが出来なかったら、君の才能を私に返してもらうよ」
魔法使いハケ
(照明スポット切れる)
(雷雨の音SE・FO)
(照明地明かり)
(モンブラン床で寝ている状態で板付き・カストレネロ板付き)
(窓枠が外れる音SE)
(ニック入り)
ニック「モンブラン、モンブラン! 起きろ!」
モンブラン「……ニック、うるさい」
ニック「せっかく親友が帰ってきたっていうのに、そりゃあないだろ」
モンブラン「また絵を描きにか。今回はエジプトだったか?」
ニック「そうそう。お陰様で俺の絵がまた売れたんだ」
モンブラン「そりゃあよかったな。それにしても……また窓外して入ったな」(起きる)
ニック「あ、そうだ。これ土産。キャラバンの連中にもらったんだよ。お前こういうの好きだろ」(本を渡す)
モンブラン「……本? 貰ったって、どういう経緯でだ」
ニック「キャラバンの占星術の奴がくれたんだよ。『いずれ貴方や貴方の友達に訪れるピンチを助けてくれます』って」
モンブラン「なんだそれ。っていうか、所々が日本語じゃないか。どうやって読むんだ」
ニック「まあまあ。お前の家に辞書あったろ」
モンブラン「まあな。……それにしても眠くてかなわない。二度寝してもいいか」
ニック「そう言ったって、今何時だと思ってるんだ。久しぶりに帰ってきたら寝てるし、もしかしてまた遅くまで作業してたな?」
モンブラン「あぁ、あー……気付いたら、床で寝ていた……」
ニック「相変わらずだなぁ。いずれ死ぬぜ?」
モンブラン「悔いの残る生き方をしているつもりはない」
ニック「おいおい。それでもヨーロッパ一の彫刻家『スカーフェイス・ミケランジェロ』かよ」
モンブラン「なんだそれ。ダサすぎるだろ」
ニック「描いた先で聞いたお前の渾名だよ。ほんとますます有名になるな」
モンブラン「興味ない」
ニック「相変わらずだな。彫刻作ってもう十年ちょいか?」
モンブラン「ああ。俺が彫刻を作る目的は一つだけだ」
ニック「『夢に見た人を彫るため』だろ。それも変わらないな」
モンブラン「……雷に打たれた時から、ずっと目指しているんだ。何度も何度も挑戦しても、いつもどこかが物足りない」
ニック「へえ。それで、この子が新しい作品か」
モンブラン「ああ。カストレの時点では男か女かさえもわからないままに彫っていた からうまくいかなかったんだ。ネロはちょうど一週間前に完成したものだな。今のところ、一番理想に近い」
ニック「理想、ね。ネロって言うのか、随分かわいい子じゃないの」(ネロに触る)
ネロ「何よ」
ニック「……ん?」
モンブラン「どうした、ニック」
ニック「ん~~???」
モンブラン「おい、睫毛でも欠けてたか?」
ニック「そういうわけじゃないんだけど……これ、大理石だよな」
モンブラン「ああ」
ニック「まさかとは思うが、人間に石被せたりしてないよな」
モンブラン「違う。大理石から彫り出した」
ニック「じゃあ石仮面被せた?」
モンブラン「何だそれ」
ニック「……うーん、やっぱり気のせいだな、なんでもないよ」
モンブラン「そうか。それで、一体何の用だ。ただ俺を起こして土産渡すためにわざわざ窓枠外したんじゃないよな?」
ニック「そうそう。俺の帰還祝いのパーティーがあるっていうから誘いに来たんだ。お前がいないと始まらない」
モンブラン「ああ、そりゃどうも。新作を彫りたいから遠慮するよ」
ニック「ちょおいおいおい、今の行く流れだったろ」
モンブラン「別に行ってもいいが、どうしてもか?」
ニック「じゃあ言い方を変える。来てくれ。中東の方の話を聞きたがるのがジジイばかりでかわいい子がいないから退屈なんだ」
モンブラン「……わかった」
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