物語喰者
登場人物
語(かたり)・・・・・・物語を書くものばかりを狙う殺人鬼。食人嗜好で物語を書く人間の脳みそが特に好物。
月見山来聡(やまなし こと)・・・・・・大学4年生の小説家志望。ワークショップで出会った東宗弘に師事し、身寄りのない彼の周りの世話をしながら小説を書く。
安田和伸(やすだ かずのぶ)・・・・・・語がこっそり通う小さな書店で店番をするようになった大学1年生。
沼健次(ぬま けんじ)・・・・・・小説家ばかりを狙う連続殺人事件を追うベテラン刑事。
有元茉彩(ありもと まあや)・・・・・・沼の部下で一緒に連続殺人事件を追う。
東宗弘(あずま もとひろ)・・・・・ベストセラー作家。来聡の師匠。
1 脳を喰らう殺人鬼
(東の書斎。辺りは暗く、雨が降り雷が鳴っている。書斎には東ともう一人、ナイフを持った男)
東 や、やめろ・・・・・・
語 ・・・・・・
東 何が目的だ?金か?金ならいくらでもくれてやるから・・・・・・
(語が無言で東に近づく。持っていた刃物を突き上げ、東の胸へ振り下ろす)
東 うわぁぁぁ・・・・・・
(東がその場に倒れる。語が東の頭を切り、刃物の柄で頭蓋骨をかち割り、脳を取り出し口へと運ぶ)
語 (咀嚼音)ん・・・・・・これは美味い。流石はベストセラー作家だ。物語を作る脳はやはり絶品だ。
(残りを取り出して食べ切る)
語 ふぅ、ご馳走様でした。
2 小説家連続殺人事件
(警察署の小会議室。健次と茉彩が話をしている)
茉彩 殺されたのは東宗弘。言わずと知れた大人気作家です。本を読まない健次先輩でも名前を聞いたことくらいはあるんじゃないですか?
健次 あぁ。最近なんとか賞とか取って、話題に上がってるよな?
茉彩 ・・・・・・先輩が言ってるのは直木賞のことですね。まあ東先生は直木賞取る前から本好きの間では有名でしたから。そんな先生が殺されたなんて私・・・・・・信じられません。
健次 その口ぶりだと、その先生の本も読んだことあるんだな。お前が読んだ本を書いがやつが次々と殺されてまぁ・・・・・・お前、死神なんじゃね?
茉彩 馬鹿なこと言わないでくださいよ!本好きなら通って当然の先生方が亡くなってるんです。同じように悲しんでいるのは私だけじゃないと思います・・・・・・ううぅ。
健次 まあ、小説家ばかりを狙って殺しをしてるくらいじゃ、犯人もよほどの本好きなんだろうな。
茉彩 そんなの、本好きとは言いませんよ。素晴らしい物語を届けてくれる先生方を殺してしまっては次が読めないじゃないですか!
健次 そうだよな。犯人の意図がまるでわからん。あともう一つわからないのが・・・・・・
茉彩 遺体は刃物で心臓をひとつき。そしてなぜか頭蓋骨が砕かれて脳だけが綺麗になくなってる。
健次 被害者の脳だけを持っていくなんて気味の悪い・・・・・・
茉彩 どう言うつもりなんですかね?小説家の脳を集めて。小説家の脳を解剖して、お話を書くヒントにでもするつもりでしょうか?
健次 それで話を書けるようになろうって考えてるのならそいつには一生話なんか書けないだろうな。頭悪すぎるだろ、その考え。
茉彩 確かに。
健次 それにしても、これだけ殺されてるのにまだ犯人が浮かび上がってこないなんて、俺たちも情けねえな。
茉彩 今年入ってもう5人も作家さんがお亡くなりになって・・・・・・いい加減犯人を止めなきゃですね。
健次 そのためにも出かけるぞ。もう一度現場周りをあたってみよう。
茉彩 了解しました!
(健次と茉彩が出ていく)
3 殺人鬼と小説家の卵
来聡 『私は月見山来聡。23歳。大学4年生。小説家志望。一度文学賞を受賞し、本を出版するも鳴かず飛ばず。そんな折、私は大学の特別授業の講師に来ていた東宗弘先生に会った。彼の作品はもちろん読んでいて、ファンだった。だから私は彼の身の回りのお世話をしながら何か盗めないかと、彼の一軒家を出入りするようになった。彼に身内はいなかったので私の手はだいぶ助かっていたと思う。あんな殺され方をするなんて・・・・・・。今日は大学は休み。私は東先生の遺品整理のため、彼の家へと向かった。』
(鞄とファイルを持った来聡が東の家に入る。廊下を歩いて書斎へと向かう。来聡は驚く。そこには書斎の椅子に座り本を読む語の姿があった)
来聡 ・・・・・・え。
語 ・・・・・・(来聡)
来聡 あなたは・・・・・・
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