女一人芝居


  ハル  (はる)


■■■

   暗闇の中、遠くからぶりっ子調の声が聞こえて来る。

ハル  …えー、大ちゃんはかっこいいよー。ハルはぁ、今のままの大ちゃんが好き
    だなー。…もー、ほんとだよ。あ、そーやって疑うんだー。…えー、大ちゃ
    んのまんまるなおめめとかぁ、柔らかい唇とかぁ。身体もがっしりしてるし
    ぃ。…うん、ほんとだよー。抱かれててほっとするっていうか、頼りになる
    なーって。

   舞台上の明かりがつく。
   ハル、携帯を手に舞台上に現れる。

ハル  …うん。…ハルもぉ、こうやって大ちゃんと電話できるの幸せ。

   鍵を舞台中央のテーブルの上に放ると、鞄を床に投げ捨て、携帯に耳を当てた
   まま服を適当に
   脱ぎ散らかす。

ハル  …うん。…え、ほんと? でもあれすごく高いよ? …うん。…えー、そん
    な悪いよぉ。…いいの? …うぅん、嬉しい。大ちゃんありがと。…じゃー、
    また今度会ったときは、ちょっとサービスしちゃおっかなぁ。…うん、特別
    だよ。…ハルもちょっとドキドキしてる。…うん、大ちゃんに会えるの楽し
    み。…うん、…一緒に気持ちよくなろ? …うん。…うん、いつもありがと
    ね。…19日。…うん、うん。じゃーねーおやすみなさーい、はーい。

   ため息とともに携帯を机の上に置く。
   疲れたといった様子で佇むハル、脚をぼりぼりとかくと舞台袖にはける。
   ハル、水の入ったコップとサプリメントの袋と冷えピタを持って戻って来る。
   それらをテーブルの上に置きながら携帯を手に取る。

ハル  もしもーしハルだよー、だいちゃんどうしたの? …うぅん、大丈夫。…う
    ん。

   携帯に話しかける一方で額に冷えピタを貼るハル。

ハル  …90分? …あ、延長? なーんだもーハルどきどきしちゃった。…だいち
    ゃんのいじわるー。…うん、連絡ありがとねー。…うん、好きだよー。…う
    ん、はーい。…はーい。

   携帯を耳から離すとともに、ハル、鞄を見る。
   ため息をつきながら鞄を開くと中から別の携帯。
   これまでとは打って変わって気怠気に話し出す。

ハル  …え、なに? …うん、元気元気。…うん。…うん、まぁ特に大きいのは。
    …風邪とか。…そーゆー小さいのはあるじゃんってこと。…うん。…大丈夫
    だって、うん。…んー、まぁまぁ。…うん、そう。…だいたいそんな感じ。
    …お父さんは別に。…え? いや、別に心配とかそーゆーのないでしょって。
    …あー、はいはい。…わかってるって。亮太は? 元気にしてる? …あ、
    そう。…まぁ年頃だからねー。…んー、あるある。そんなんばっかよ。…心
    配性なんだって。…そーそー。

   コップに入った水でサプリメントを飲む。

ハル  …えー。…やだ、絶対やだ。…まぁ、正月には顔出すよ。…ほら、去年は忙
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