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生を待つ家

生を待つ家

アキラ
カゲノ

家族

事務所のような部屋。

カゲノ　　本気か？
アキラ　　本気です
カゲノ　　はは。冗談だろ？
アキラ　　本気です
カゲノ　　本当に辞めるの？
アキラ　　はい、辞めます
カゲノ　　却下！

カゲノ、辞表を破り捨てる

アキラ　　ああ、もう！いつになったら辞めさせてくれるんですか
カゲノ　　何度も言ってるだろ。人手が足りないの。辞められたら困るの。わかる、アキラくん？
アキラ　　そんなの私には関係ないですもん
カゲノ　　やだなぁ、辞めてほしくないなぁ
アキラ　　駄々こねてもダメですからね
カゲノ　　え、なんで辞めたいの？アキラくん、はじめのころは「やりがいのある仕事だ」って言ってたじゃん
アキラ　　やりがいはありますけど…
カゲノ　　なによ
アキラ　　看取りが…
カゲノ　　あー、そうだと思ったよ。辞めたいって言うやつはみんなそうだ
アキラ　　だって
カゲノ　　思っていたのと違う、って言いたいんだろ。こういう仕事だってのは最初からわかってただろ
アキラ　　でも、もっと私にできることがあると思ってたんです。でも、現実は、私にできることなんて何にもないじゃないですか。一人、また一人、ただ見守っているだけだなんて
カゲノ　　アキラくん、僕たちは神さまじゃない。人間だよ。自分を過信しない方がいいし、気に病むこともない。人間なんだから、みんな等しく最後には生まれるんだから

赤ちゃんの泣き声。

カゲノ　　ほら、仕事だよ

部屋を出て、向かうのは病室のようなところ。
そこには、ベビーベッドがいくつも並んでいて赤ちゃんが眠っている。

カゲノ　　赤坂さん、どうしましたか？

一人の赤ちゃんに声をかけるカゲノ。

カゲノ　　オムツ濡れちゃったかな。ちょっと替えるね

オムツを替え始める。
また別のところで泣き声。

カゲノ　　アキラくん、行ってー
アキラ　　はーい。赤井さん、どうしましたか？…おなか空いたのかな
カゲノ　　赤井さん、ミルクすぐ来るからねー。あ、アキラくん。赤川さんの様子も見に行ってよ
アキラ　　はーい

アキラ、また別の赤ちゃんのところへ行く。

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