こそあど会議 2014
『こそあど会議』 2014年版

   とある怪しげな会議室。
   四人の人物が椅子にそれっぽい雰囲気で座っている。
   会議は「あれ」とか「それ」とかで進められるが、
   全容を理解している者はどうやらこの場には誰もいないようだ。
   
山本「では、例の会議を始めるとしよう」
長瀬「例の件はどうなっている」
井上「例の件はつつがなく進んでいる。問題はあれだよ」
牛島「あれか。あれは確かに早急に対処しなければならない」
山本「あれの管轄は誰だ」
井上「あれを担っているのは奴だ」
山本「なるほど、奴か」
牛島「奴は信用できるのか?」
長瀬「奴は確かに裏がある。しかし使える駒ではある。奴にはあれをつけている。問題なかろう」
牛島「あれか。うまく機能すればいいがな」
山本「働いてもらわなければ困る。あれは我々の切り札なのだからな」
井上「ふん、なるほど。あれを奴につけている限り、あれは問題がないということだな」
長瀬「それはそうと、あの件はどうなっている?」

  以上までは全員がわかっている体で会議を行っている。
  以下より、何の話をしているのかわからない、
  話についていけない人物が一人以上いることになる。

山本「あの件?あの件とはどの件だ?」
長瀬「あの件はあの件だ」
牛島「なるほど、あの件か」
長瀬「そうだ、あの件だ」

  長瀬、指のジェルチャーで「あの件」を表現する。
  それに合わせて山本と牛島も指のジェスチャーをする。
  井上、少し遅れて動きをマネする。
  どうやら井上だけわかっていないようだ。

  井上、焦って自分が知っている話題に切り替える。

井上「その件に関しては私の部下が上手くやっている。その件はこの件を片付けてからだ」

  ピピピ、ヴォン、と目の前に立体映像が飛び出す。
  映像が飛び出すのに合わせて山本、長瀬、牛島が前のめりになる。
  そして全員、首を傾げる。
  首を傾げたまま、

山本「これは……」
長瀬「あれか…?」
井上「そうだ、例の彼だ」

  牛島、体勢を戻し、気を取り直して、

牛島「例の彼……」

  山本も体勢を元に戻し、

山本「彼は例の彼女に任せるのではなかったか?」
牛島「しかし彼女はあの彼女とその彼女、さらにはあの彼と彼との兼ね合いがある」

  ピッ、パシュン、と立体映像が消える。
  長瀬、硬直したままだったが、立体映像が消えたことに驚き、我に返る。

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