雨色クリスマス
(クリスマス。ビルの地下にある、小さなバー。
 店内に客はひとり。恭梧が座ってウィスキーを飲んでいる。
 外の様子を見に行っていたバーテンダーの千秋が戻ってくる。)


千秋   「恭梧〜、本格的に降ってきちゃったわよ〜。
      この分じゃ電車も止まっちゃうかもしれないわ」

恭梧   「まぁ、帰れなくても問題はないさ。
      けど雨かぁ、せめて雪なら雰囲気もあるのにな」

千秋   「あら、アタシと二人で素敵なクリスマスを過ごす?」

恭梧   「雪が降ったとしても、お前とじゃムリ」

千秋   「そうよねぇ〜」

恭梧   「来るときに街頭販売の女の子がいてさ、
      サンタの衣装が寒そうだったんだよなぁ……濡れてないといいけど」

千秋   「書き入れ時だってのに、ケーキ屋さんがかわいそうだわ。
      せっかく若い女の子にそんな衣装着せても、
      ケーキは売れない上に時給だけ持ってかれるんじゃぁねぇ」

恭梧   「相変わらず女に厳しいな」

千秋   「それで?
      なぁに、もしかしてそのミス・サンタに一目惚れでもしたの?」

恭梧   「お前はいつもそういう方向に持っていくんだから……」

千秋   「恭梧がまた恋ができるといいなって心配してるだけよ」

恭梧   「そいつはどーも。
      だが、残念ながらただの世間話の延長だ」

千秋   「あらそう」

恭梧   「千秋こそ、最近どうなんだ?恋人とか」

千秋   「ひ・み・つ!」

恭梧   「何だよそれ。別に他に客もいないんだから話してくれたっていいだろ」

千秋   「そうねぇ……、恋はいつでもしてるわよ」

恭梧   「へぇ。千秋の好みってどんなタイプ?」

千秋   「年はまぁどうでもいいけど、
      手取り足取りアタシが教えてあげられるようなコがいいわね〜」

恭梧   「何も知らない無垢なコドモに、強引に迫ったりするなよ?」

千秋   「そんなことしないわよ。
      可愛い子は見てるだけで充分だから。
      そうそう、この間、駅のあっち側でチキンの街頭販売してた男の子がいて、
      もう、すごーく可愛かったのよ〜」

恭梧   「なんだ、街頭販売のサンタに一目惚れって、自分のことだったんじゃないか」

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